東洋医学と鍼灸治療について
鍼灸治療は、漢方薬と合わせて現代における『東洋医学』とされています。
西洋医学が病気やケガの治療を目的にしているのに対し、東洋医学では病気やケガの根本的な原因が何であるのかを探り、その原因を取り除いていくことを目的としています。
例えば、腰痛の症状が出ているとします。
腰痛といえば、筋肉や筋膜に問題がある腰痛、脊柱管狭窄症や椎間板ヘルニアからおこる腰痛がすぐに思い浮かぶのですが、その他にも内臓系疾患に起因する腰痛、女性であれば婦人科系疾患からおこる腰痛、そしてストレスからおこる腰痛もあります。
東洋医学的には、身体の「冷え」や「瘀血(血液の滞り)」、「エネルギー(特に腎気)の不足」など、全身の問題が原因の腰痛も多くみられます。
このように、症状がでている箇所以外に病気やケガの根本的な原因が隠れている場合は、『東洋医学的診断である四診(望診・問診・聞診・切診)』を用いて脈・ツボ・お腹・背中・手足・心(精神)の状態など「その人全体」を診ていきます。
四診とは?
四診とは、望診・聞診・問診・切診の4つのステップによる診察のことです。
ぱっと見た感じ・歩く様子など動作・眼の力・顔色・皮膚の様子・髪の毛・舌の様子(舌診)など
声の大きさや張り・呼吸音・体臭など
脈を診る(脈診)・お腹を診る(腹診)・触診(手足・背中・腰・頭などに触れ、・冷えや熱感、むくみがないか確認する)など
東洋医学における健康とは?
東洋医学には、健康な状態であることを確認する要素として、「気・血・水」という概念があります。
- 「気」はすべての基本であり、生命活動のエネルギー源のこと
- 「血」は全身に栄養と温度を与える血液のこと
- 「水」はリンパ液や汗・涙など血液以外の体液のこと
この「気・血・水」の3つは、多すぎる(実)のも、少なすぎる(虚)のも良くありません。
多すぎず少なすぎずバランス良く滑らかに体内を巡っている状態(中庸)を、東洋医学では健康的な状態と考えます。
健康の基本となる「気・血・水」を過不足なくスムーズに巡らせるためには、「肝・心・脾・肺・腎」の五臓の働きが重要になると考えます。
これら五臓は、西洋医学でいうところの臓器とイコールではありません。
それぞれに東洋医学特有の働きがあります。
例えば、下記の図の「肝」を例に見てみましょう。
万物が蘇生する「春」には、自然界と同様に人間の身体も新陳代謝が活発になり、冬に溜まった老廃物を出そうとします。
「肝」は解毒の働きを司っているため、春は肝の働きのひとつである「解毒作用」が他の季節以上に必要となり、肝がオーバーヒートを起こして疲れやすくなります。
また、肝は「怒り」の感情を司っており、肝の気の流れが滞ってしまう(肝鬱)と、怒りの感情を生じイライラと怒りっぽくなります。
イライラしやすい場合は、青(緑)の食べ物、芽吹いたばかりの山菜など旬の食材、酸味のあるお酢の物などを食べると「肝」が養われてイライラが落ち着いてきます。
「肝」以外の「心・脾・肺・腎」についても同様に見てみてくださいね。
東洋医学では、この五臓の働きを整えることで、人間は健康な状態を長く保てると考えられています。